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電磁波(ノイズ)シールドの効果を左右するのは何か
一般に、鉄・銅・アルミといった金属材料が本来持つシールド効果は100〜200dB程度とされており、材料そのものの性能は十分にあるといわれています。それにもかかわらず実機で効果が得られない主な要因は、材質ではなく、接合部と開口部にあります。
電磁シールドは、金属の表面を流れる誘導電流によって外部からの電磁界を打ち消す仕組みです。そのため、ケースの合わせ面やすき間があると電流が流れにくくなり、シールド効果が損なわれます。ネジで接合する場合には、ネジの間隔を波長の10分の1以下に抑えることが望ましいとされています。
つまりシールド性能に影響するのは、「広い面が塗装されているかどうか」ではなく、「導通させたい箇所で電流が途切れていないかどうか」ということになります。
カチオン電着塗装の塗膜と導通の関係
カチオン電着塗装で析出するのは、エポキシ樹脂を中心とした樹脂の膜です。金属の膜を形成するメッキとは異なり、焼付け後の塗膜は電気的には絶縁体としてふるまいます。
また、電気が届く場所であれば複雑な形状の内面・隅部・端部まで均一に塗膜が形成されるという特長があります。この「つきまわり性」の高さは防錆の面では大きな利点ですが、導通を残したい箇所にも同じように塗膜が形成されることを意味します。
膜厚についても同様です。ネジやボルトなどの締結部は、塗膜が厚すぎると部品同士がしっかりと締結できず、緩みや脱落といった不具合につながる可能性があります。ボルト座面の面圧は接触抵抗に影響しますので、膜厚の管理は防錆の観点だけでなく、ノイズ対策の観点からも重要になります。
そのため電磁波対策が必要な部品では、塗装する箇所・塗装しない箇所・導通させる箇所を、あらかじめ図面上で明確にしていただくことが前提となります。
導通部を確保するマスキング方法
塗装したくない箇所に塗膜を付けない方法を、それぞれご紹介します。
① テープ・シールマスキング
塗装前に該当箇所をテープやシールで覆う方法です。試作や単純な形状に適していますが、貼付けの工数がかかり、塗料がしみ込んでしまうこともあります。
② 治具マスキング /マスキングゴム
専用の治具で被塗物を挟み込み、塗料が付かないようにする方法です。同一形状を繰り返し生産する場合に適しています。
③ 製品専用設計マスキング
シリコンゴムをワッシャやプレートなどで押さえ、ボルトで締め付ける方法です。製品形状に合わせて設計しますので、円筒内部や平面部、複雑な形状にも対応できます。一品一葉のため高価な治具となりますが、品質および長期使用には適しております。
④ レーザーマスキング
①〜③は塗装前のマスキング方法ですが、レーザーマスキングは塗装後に行う方法です。塗装した製品をレーザー機にセットし、レーザーを照射することで、必要な箇所の塗膜を剥がします。
▶カチオン電着塗装におけるマスキングの重要性についてはこちら
当社の取り組み
カチオン電着塗装.comを運営する藤塗装工業では、導通部の確保が必要な部品に対して、下記の3つの点に意識して取り組んでいます。
1. レーザーマスキングによる導通部の確保
レーザーマスキングはプログラム制御ですので、マスキング忘れや位置ズレが発生しづらいことが特徴です。電磁波対策が必要な部品では、アース点、ケースの合わせ面、ガスケットの当たり面、ボルト座面など、導通が必要な箇所が1つの製品に何か所も生じます。
当社は専用のレーザー機を保有しており、1つの製品で10か所以上のマスキングが必要な場合や、月産1万台以上の大量生産品に採用しています。シールマスキングと比較して工数が10分の1以下となり、コスト削減にも役立ちます。なお、対応できるのは平面部ですので、曲面や凹部は治具マスキングとの併用をご提案しております。
この技術は、当社が2013年にものづくり補助金に採択され、完成させたものです。その後、光学メーカーに採用され、当社が名付けた「レーザーマスキング」の名称が図面に記載されております。
2. 剥離後の素地の耐食性の確保
塗膜を剥離した箇所は鉄素地が露出しますので、防錆の弱点になり得ます。剥離範囲を必要最小限に抑えること、剥離面が最終製品でどのような環境に置かれるかを整理しておくこと、合金化亜鉛メッキ鋼板やSGCCなど素地自体に防食性のある材質を検討することが、耐食性を確保するうえでのポイントとなります。当社では図面を拝見したうえで、こうした点を含めてご提案いたします。
3. 塩水噴霧試験による事前評価
当社では、テストピースや現物製品を社内の24時間×365日の塩水噴霧試験機で評価しております。剥離仕様を含めた実際の製品で事前に確認したうえで、量産に移行することが可能です。
当社の塗装事例
電子制御ユニットを収めるカバー部品の事例をご紹介します。
ECUカバー

近年の自動車の高機能化に伴い、1台に使用されるECUの数は増加しています。本製品はそのうちの1つで、エンジン・ハイブリッド制御盤に使用されるECUカバーです。電子部品であるため一般的な部品よりも厳しい品質が求められ、塗装外観限度についても細かくご指示をいただいておりました。また、基板の発熱によるショートを防止する必要があることから、均一に塗装ができ、エンジンから発生する水蒸気にも耐えられるよう、放熱性と耐食性に優れたカチオン電着塗装が採用されています。
板厚が薄い製品であるため、塗装の際は四隅の掛け穴のある部分にのみ圧力がかからないよう、柔軟性に優れた塗装治具を使用しております。塗装後の洗浄では、不純物が混じって水滴跡が付かないよう純水で洗浄し、梱包時には専用の箱に梱包することで、傷一つない状態でお客様にお届けしております。
カバーインバーター

xEVの高電圧・大電流を制御するインバーターカバーには、安全性・耐久性・信頼性に加え、優れた放熱性能が求められます。当社では、電着塗装の高いつきまわり性を活かし、水冷ジャケットや水冷フィンなどの複雑形状にも均一で強固な防錆・保護塗膜を形成しています。
特に、複雑なフィンや凹凸部で発生しやすい「エアポケット」や「液溜まり」に対しては、製品形状に合わせた専用治具・ハンガーを設計し、電着槽への投入・引き上げ角度を最適化。前処理皮膜の管理と組み合わせることで、未塗装や過剰膜厚を抑え、安定した塗装品質を実現しています。
さらに、接地面や締結面などの塗装不可部にはレーザーマスキングを活用し、手作業によるばらつきや工数を削減。複雑形状への安定した電着塗装と高精度マスキングにより、xEV用インバーター部品の品質向上とリードタイム短縮を両立しています。
まとめ
電磁波(ノイズ)対策と防錆の両立につきましては、塗膜そのものよりも、導通させる箇所をあらかじめ設計に織り込めているかどうかが重要になります。
カチオン電着塗装.comを運営する藤塗装工業は、電着塗装を行う安城工場と吹付塗装を行う碧南工場を車で15分程度の距離に構え、日々4,500点以上の製品を取り扱っております。図面が固まる前の段階からのご相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。



