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技術コラム

電着塗装のブリスター(膨れ・ワキ)について!症状別の原因と対策を徹底解説

「ブリスター」とは

電着塗装

電着塗装後に塗膜がぷくっと膨れ上がる現象を「ブリスター」と呼びます。日本の製造現場では「フクレ」「ワキ」「膨れ」とも表現されます。
ブリスターは、塗膜とその下層(素地・メッキ層・化成皮膜)の密着力が低下し、内部で発生した水分・ガスが熱によって膨張することで塗膜を押し上げて生じます。一度発生すると表面だけの補修では根本解決にならず、原因の工程まで遡った対策が必要です。

ただし、電着塗装のブリスターは、自動車の補修塗装や吹付塗装で発生するブリスターとはメカニズムが異なります。電着特有の電流・液質・素材起因によって引き起こされるケースが多く、一般的な「脱脂強化・乾燥強化」だけでは解決しないことがあります。

本記事では、電着塗装で発生するブリスターを3つに分類し、症状の見た目から原因を特定する方法と、現場で即実践できる対策を解説します。「自分の現場で起きている症状はどれか」を照らし合わせながら読み進めてください。

電着塗装におけるブリスターの種類

電着塗装で発生するブリスターには、外観・発生部位・起こりやすい素材が異なる3つの種類があります。
それぞれの原因と対策を以下で詳しく解説します。

①バイポーラ:片側面に泡跡状のブリスターが発生する

バイポーラとは本来、通電されていない部品や治具が電場内で陽極・陰極の両極として作用する双極現象を指します。本記事では電流異常に起因するブリスター全般を「バイポーラ」として解説します。塗膜の片側面に集中して泡跡状の膨れが現れるのが特徴で、発生部位が局所的なことから設備起因であることが多々あります。 

【原因①:接触不良による電流異常】

通電バー・集電子・ハンガーの接触不良が起きると、局所的に電流が集中または不足し、その箇所でガス抜けが阻害されてブリスターが発生します。ハンガーへの塗料堆積が接触不良の最大の原因です。

【原因②:ハンガー間距離による電界干渉】

ハンガーとハンガーの距離が短すぎると電界が干渉し合い、隣接する被塗物の表面電流が乱れてガスが抜けにくくなります。

【原因③:撹拌不足・電圧高・MEQ高によるガス抜け不良】

電着槽の撹拌が弱い状態で電圧が高いと、被塗物表面で発生した電解ガスが抜けないうちに塗膜が形成されてしまいます。MEQが高い(中和剤などの溶剤料が過剰)場合も塗膜の造膜安定性が低下し、ガスが閉じ込められやすくなります。 

【対策】

・通電バー・集電子の清掃・改善、ハンガーの定期剥離(塗料堆積の除去)

・ハンガーとハンガーの間隔を広げて電界干渉を低減する

・撹拌強化(ポンプ吐出圧のアップ)

・電圧をダウン、MEQ調整

【ポイント】

液質を変える前に、まず設備(通電バー・ハンガー)の状態を確認することが先決です。

②メッキ層フクレ・ワキ:下層から盛り上がるブリスター(メッキ素材・厚板に多い)

「ワキ」は製造現場でよく使われるブリスターの別称で、塗膜が凸状に盛り上がりワキ肌状になる現象を指します。メッキ鋼板や厚目付鋼板、高張力鋼を素材として使っている部品で発生しやすいです。下層(メッキ層・化成皮膜)から押し上げられるように膨れるのが特徴です。

【原因①:メッキ異常によるガス発生】

メッキ浴液の異常によって電着槽内でH2ガスが発生したり、亜鉛メッキ層にひび割れが生じると、塗膜の内側で内圧が上昇してフクレが発生します。素材のメッキロットが変わったタイミングでフクレが発生し始めた場合はこの原因を疑います。

【原因②:乾燥炉の過熱による熱膨張・ガス膨張】

電着後の乾燥炉温度が高すぎると、前処理中に変化したメッキ層が熱膨張し、同時にメッキ層内に閉じ込められたガスが膨張して塗膜を押し上げます。乾燥炉の設定温度と実測温度にズレがある場合は要注意です。

【原因③:塗膜の柔軟性不足】

化成皮膜が厚すぎる場合、またはASH(※)が高い・溶剤量が少ない状態では塗膜の柔軟性が不足します。下地から発生するガスや熱膨張に塗膜が追従できず、膨れとして顕在化します。
※ASH:塗料を高温で燃焼させた際の灰分率、塗料濃度・固形分の管理指標 

【対策】

  • メッキ浴液の点検・調整、前処理工程の液温チェック
  • 乾燥設定温度の変更・低減(炉内の実測温度を定期確認する)
  • 素材のロット変更・プレス時の金型清掃(素材起因の場合)
  • 化成皮膜液の調整、ASH・溶剤の調整(溶剤補給材・調整剤の添加) 

【ポイント】

素材起因か工程起因かを切り分けることが重要です。素材のロット変更前後でフクレが増えた場合は素材起因の可能性が高く、まずメッキ浴液と素材ロットの確認を優先してください。

③二次タレ・塗膜破壊:合わせ目から吹き出し、ブリスターが破裂した状態

二次タレ・塗膜破壊は、合わせ目やシームに塗料と電解水が溜まり、焼付工程の熱で内部から吹き出す現象です。「ブリスターが膨らんで最終的に破裂した状態」とも言えます。塗膜が荒れて凸凹が激しくなるのが特徴で、目視でも明確に判断できる重篤な不良です。

【原因①:水洗不足によるシームからの液ダレ】

電着後の水洗が不十分だと、合わせ目やシーム内部に塗料成分が残留します。これが焼付工程で加熱されると液化して吹き出し、塗膜を破壊します。

【原因②:過剰スペックによる塗膜の異常成長】

膜厚過多・固形分高・電圧高・液温高・MEQ高といった条件が重なると、塗膜が必要以上に成長します。過剰に成長した塗膜は、内部のガス発生や液の気化に対して追従できず、焼付工程で破壊されやすくなります。
なお、これらのパラメーターは相互に影響し合うため、一つずつ段階的に調整することが重要です。 

【原因③:汚染物質の残存】

前処理後の素材表面に汚染物質が残っていたり、塗料に不純物が混入していると、局所的に造膜が乱れて塗膜全体が破壊されます。

【対策】

・ノズルの点検(角度・圧力・詰まり・清掃)と前処理工程の全体見直し

・塗料の希釈促進(純水または指定希釈剤の添加による固形分の調整) 

・電圧・液温をともにダウンして造膜速度を抑制する

・UF濾過液の廃棄による液質のリフレッシュ

【ポイント】

この段階まで進むと補修コストが大きくなります。二次タレが頻発するようであれば、工程全体の条件設定を見直す必要があります。

電着塗装のブリスターを繰り返さないための予防管理

一度ブリスターが解消しても、管理が行き届かないと同じ不良が再発します。以下の4点を定期管理の習慣として取り入れることで、再発リスクを大幅に低減できます。

①素材受入時のチェック

メッキ鋼板・高張力鋼はロットが変わるとメッキ付着量や鋼板組成が変化し、フクレ発生率が急変することがあります。新ロット受入時にはテストパネルで電着試験を行い、問題がないことを確認してから量産に投入することが理想です。

②乾燥炉温度の定期実測

炉内実測温度の記録と管理を定期的に実施することを推奨します。頻度は製品の品質要求や設備の状態によって異なりますが、一般的には月1回程度を目安とし、季節変動や設備の経年劣化に応じて適宜見直してください。

③前処理工程の定期点検スケジュールの設定

水洗ノズルの詰まり・液温の変動・汚染物質の蓄積は、徐々に進行するためトラブルが顕在化するまで気づきにくい問題です。週次または月次でノズル点検・液分析・水洗水の更新を行う定期スケジュールを設けることで、未然防止につながります。

④治具・ハンガーの定期清掃・剥離サイクルの設定

ハンガーへの塗料堆積はバイポーラの最大の原因です。「何ショットに1回剥離する」というルールを設け、剥離後の通電確認(抵抗測定)を実施することで、接触不良に起因するブリスターを防げます。

電着塗装のブリスター・膨れ・ワキでお困りの場合はご相談ください

本記事で解説した3種類の症状を確認・対策しても改善しない場合や、「自分の症状がどの種類に当たるか判断できない」という場合は、ぜひ当社にご相談ください。
症状の写真や発生状況(発生頻度・素材・工程条件)をお知らせいただければ、原因の診断から具体的な対策提案まで対応いたします。
当社は高い品質基準での管理体制を持ち、カチオン電着塗装と静電吹付塗装の一貫対応が可能です。電着塗装の品質問題に関するご相談は、少量・単品からリピート量産まで柔軟に承っております。


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